「終わることのない、廃炉の現実 -2019-」を執筆しました。

2019年現在の、事故を起こした福島第一原子力発電所(福一)の事故処理の現状、そして福一という時限爆弾を背負ってしまった私たちに今後できることなどをまとめました。内容全般にわたって新聞記事などの文献をもとに作成したので、信ぴょう性は高いと思います。

文量が多いので、ここでは序章のみ記載します。気になった方は「序章」の下にあるボタンをクリックしてください。

「福島第一原発は、まだ廃炉のスタート地点にも立てていない状況です」
元東芝・原子炉格納容器設計者である後藤政志氏は、現在の福島第一原発(以下、福一)の事故処理の状況をこう評する。

政府は、長くとも事故から40年後の2051年までには廃炉を終えるとしている。それを大前提として、除染を進め、避難指示地域を次々と解除していき、住民の帰還政策を推し進めている。しかし、実際は福一の3つの原子炉で融解し燃料デブリとなった塊880トンが、どこにどれだけあるかわかっておらず、その具体的な取り出し方法も決まっていない。
廃炉の工程は、燃料デブリを全て取り出し、通常の原発と状況が同じになって初めて組める。ゆえに福一はまだスタート地点にすら立っていないのだ。

しかし、果たして本当に廃炉にできるのであろうか。

1957年にイギリスで起きたウィンズケール原子炉火災事故(国際原子力事象評価尺度 レベル5)、1979年にアメリカで起きたスリーマイル島原発事故(同レベル5)、1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故(同レベル7)。炉心損傷や炉心融解を起こしたこれらいずれの事故炉からも、燃料デブリが完全に取り出されたことはないどれも、その高すぎる放射線量が下がるまで管理されているに過ぎず、それは今後何十年続くか、正確な数字は今をもって出ていない

2011年に、日本で起きた福島第一原発事故(レベル7)。
もし廃炉にできなければ、どういう方法で管理していくことになるのか。様々な識者の発言や新聞記事をもとに考察していったところ、放射性物質の外部流出を防ぎながら長期的に管理していくことは、その実現可能性を疑うほど技術的な困難さを伴うものであった。

そして悲しいことに、技術的なハードルを乗り越えて管理可能なレベルにまで福一を制御できたとしても、世界有数の地震大国である日本において、福一内で燃料デブリを何十年と管理していくことのリスクはあまりに大きい

次の巨大地震が福島県の周辺を襲えば、おそらく福一は再び破局的な状況に陥る。私たちはこの事実とともにこれからの残りの人生を生きていかねばならず、それは否応なく私たちの子供、孫、ひ孫へと受け継がれていく。
すでにカウントダウンが始まっているこの状況において、私たちに残されている選択肢は少ない。しかし、小さな希望を手繰りよせ、未来へとつないでいくためには、福一のこと、福島のことを忘却の彼方に追いやらずに、向き合い続けるしかないのではないか。

せとうち交流プロジェクト 渡辺嶺也